2010年5月16日日曜日

自然について


お父さんはウォッカ(モンゴルではお客さんにウォッカを振る舞う)を
飲む前に、東西南北それぞれの方向に指で弾いて、
空の神さまにまず飲んでもらってから自分が飲むようにしていた。
 

わたしが持って行ったでんでん太鼓は
仏具で似たものがあるらしく、大喜びで
神さまエリアに飾ってくれていたのだけど
 

お父さんはそれを持って、空の神さまへの祈りを見せてくれた。
「何て言ってるの?」と聞くと
「空の神さまを褒める言葉をたくさん言ってるんだよ」と。
 
そして、
「これを毎日やるとモンゴルだけじゃなくて、
日本も、そして世界中の気候が安定するんだよ」とも。
 
「今年の冬はとても厳しくて家畜がいくつか死んでしまったんだ」
そう言ったお父さんの寂しそうな顔が忘れられない。
 

自然の影響をもろに受ける生活。
それがここで体験した一番大きなことだった。
 
人も動物も自然には決して逆らえない。
それを前にしては謙虚になるしかなくて、
従って共存するしかない。
 
厳しい冬を知っている彼らだからこそ
その後にくる春・夏に感謝することができる。
 

1日、2日と経つうちにわかってきたことがあった。
最初は枯れ草ばかりだと思った草原によく見ると
小さな青い草が生え始めていた。
 
風はまだこんなにも冷たいけど、
確実に草原の夏は近付いている。
 
「5月20日に草は青々とするよ」とお父さんは言った。
なぜ20日?と思ったけれど、
ゲルに差し込む陽の光で時間を当てたお父さんのことだ。
本当かもしれない。