2009年9月13日日曜日

放課後のはらっぱ 展


愛知県美術館へ
放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち
を見に行ってきました。
 
愛知芸大で教えていた頃の
教え子たちによって開かれたこの展覧会。
その教え子たちの中にはなんとあの奈良美智さんも!いる。
 
どんな巨匠でもいきなり独自の作風が浮かぶわけではなくて
やはり皆、いろいろと試行錯誤を重ねて、
あぁでもない、こうでもないとオリジナルにたどり着く。
 
そして人は普通その過程というものを見せたがらない。
それは大抵自分自身が一番恥ずかしいものだから。
 
でもこの展覧会ではそれが惜しみもなく展示されている。
 
額田宣彦という作家の作品では
「最初の山を超えたときの作品。
次に来る山はもっと大きいとも未だ知らぬ時期でした」
というものも。
 
作家たち自身、ほほえましく自分を振り返る
そんな作業にもなっていたのだろう。
  
奈良美智さんの大学時代の油絵は特に意外だった。
今のあの画風もまだ見つかっていない時代のものだ。
絵の下にはこんな風に書いてあった。

「あまり個性的でもないし、上手くもなかった20才の頃の油絵。
描ききってしまって完成させるのが怖くて
いつも途中で筆を止めていた。
 
先生はアカデミックに描こうとしていた課題よりも
紙にかきなぐった落書きやメモのようなものを
面白いと言ってくれた。
 
ずっと普通に絵だけを描いていたら
今の自分はいない」
 
櫃田伸也という先生はなんと見る目のある人だったか。
 
大きなキャンパス一面に
「宇宙」という文字を白黒でたくさん描いた作品の真裏に
カラフルな色だけで画面を埋め尽くした作品を展示したのは
登山博文。
 
彼は4年浪人していたため
基本的なデッサン等の技術は極めていた。
やり尽くして文字に以降していたのだそう。
それが「宇宙」の面。
これも充分にもう世界が確立されているのに、
その彼に先生は言った。「色をつけたらどうだ」
文字にも行き詰っていた彼の視界はそこでパーッと開けた。
 
誰の人生もターニングポイントというのがある。
そのきっかけを作ってくれるような一言は聞き逃さずにいたいのも。
 
櫃田伸也という先生に
とってもとっても会いたくなる愛にあふれた展覧会でした。